| かわいい人 |
寮の消灯は早い。用事を済ませてベッドに潜り、そのまま早く眠れるのなら良いが、そうでないと色々と辛いものがある。 これがイヤで日中は色々と部活に精を出し、子供のように眠れるよう試してみるのだが、うまく行かない時もある。 さつきは顔を赤らめ、困ってしまう。仕方のないものと分かっているが、やはり恥ずかしい。 ベッドから降りて、寮室の風呂場に向かう。大浴場は防犯のためにもう閉まっている時間。 寮の部屋に備えられているバス・トイレは、ユニットになっていない。さすが真帆良、贅沢な造りだ。ただ、洗面所・兼脱衣所は少々狭かった。朝の支度は古菲と交代で使わざるを得ない。 パジャマの上を脱ぐと、白い体が洗面所の鏡に映る。髪を下ろした自分は、実はあまり好きではない。髪を洗うつもりはないのでタオルでまとめる。 熱めのシャワー。体が火照るまで浴びる。白い体がほんのりと桜色に染まった。 「・・・・」 さつきはそっとバスタブの縁に座った。今日は、特に変わったことは起きなかったはずだが、頭の奥が眠りにつこうとしない。目蓋は重いがこのまま眠るのを許してくれない感覚。 明日の朝も早い。3−Aでも特に強烈な個性を持つメンバーが『 超包子 』に集まってくる。その輪に入れることにさつきも喜びを感じてはいたが、『 超包子 』の仕事同様、それは日常の雑務をこなす時のように、静かな喜びだった。 将来にどう繋がるか分からないまま、作業的に古歌をノートに書き留める手習いのようなものだ。淡々として強い興奮は無いが、満ち足りている感じ。全員が高血圧っぽい3−Aにあって、さつきが特殊なポジションを占めているのは、その落ち着きがなかなか真似できないためかも知れない。 「・・・・・」 さつきは半身を風呂の縁から起こすと、洗い場に降りて再びシャワーを浴び始めた。遅い時間のように思えるが、消灯が早いために世間一般からすればまだ夜はこれからだった。明日に響くようなことはない。 静かにドアを閉める。足下灯が温かく床を照らす。設備は下手なビジネスホテルより優れた寮室。 2階建てベッドに近づくと、くーが声を掛ける。 「サツキ、眠れないか?」 「 ううん、大丈夫 」 さつきの体から、パジャマを通して湯気が立つ。部屋の暗がりでそれが見えて、古菲は彼女を「可愛いな」と思った。 「サツキはいつだったかな?」 「 先週済んだばかりだから 」 「そうか」 さつきは上の階の、自分のベッドに上ろうとハシゴに足をかけた。この部屋が決まった時、古菲は自分が上にしようか? と持ちかけたが、 「 少しでも運動になりますから 」 のんびりした答えに笑ったのを覚えている。 古菲は、黙っていようか迷ったが、冗談を我慢できなかった。 「・・・・ウーム、おかげで眠れなくなってきたアルヨ」 「 ・・・・・・!?/////」 「気にすること無いネ、みんな朝起きて何も考えずに肉まん食べるよなものネ」 「 はい・・・・///// 」 二人は昨日残った肉まんをレンジで温め、それを手早い朝食にする。 「昨日はたまたま修行に手を抜いてたから、眠りが浅かっただけね。気にしない気にしない♪」 こうは言ったが、くーにとっても不思議と意外だったので、今朝は少々寝不足である。 走らずに『 超包子 』に行こうとすると、この時間に出ないと間に合わない。二人は仲良く歩き始めた。 まだ明けやらぬ学園都市。歩く二人は、あまり言葉を交わさない。テンションの高い古菲だったが、さつきと一緒だと静かな時を過ごせた。 「ムム? 今日は少し遅れたあるネ」 駅に普段乗る列車が滑り込もうとするところだった。改札をくぐってすぐのホームだから、間に合わないことはない。 「さつき、走れるか?」 「 はい 」 くーが何の気無しに気遣いを見せるのも、さつきが相手の時だけだった。古菲も改めて考えたことはまだ無いが、このような友人関係を持ったのは、さつきが初めてだった。意識に上らず続けられる付き合い。だからこそ、昨夜のことは非常に珍しい出来事といえたのだった。
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2008.2.10 三碧星
| この作品は講談社 週間少年マガジンに連載された 『魔法少年 ネギま!』 赤松 健 先生の作品の二次創作です。 |
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